DEMO実証調査事例

粟島スマートアイランド推進プロジェクト

香川県:三豊市:粟島

概要

島の課題

  • 本土に比べ著しく高齢化・人口減少が進む粟島。
    その状況において住民は必要なサービスを充分に受けられない不便な環境の中で生活をしなければいけない状況。
  • 島民が豊かに暮らし続けるためには、生活に必要不可欠な移動手段の確保、医療提供体制の確保、スムーズな物流の構築が必要。

位置図

調査体制

取組概要

1.グリーン・スロー・モビリティ(GSM)を活用した島内移動の確立

島内中心地、診療所や集落などに停留所を設定し、新たな島内移動手段の確保に向けGSMによる実証運行を行う。車載タブレットと連動するクラウド型予約・運行管理システムを導入し、管理工数軽減を図ると共に動態の可視化や人流データの把握を行う。
なお、GSMの充電に使用する電力についてはGSM本体から充電量を把握し、香川県内で創出された環境価値を充電量に充当する事で、粟島における交通インフラの脱炭素化をバーチャルに実現する。

2.新しい通信インフラによる輸送サービスの確立

将来的な陸・海・空における無人航行の実現に向け、無人移動体伝送システムを利用したドローンによる医薬品や食品等の輸送に関する実証実験を行う。なお、目視外飛行に必要な気象ライブソリューションによる自然災害時の情報提供への活用も視野に入れ、離島に適した通信インフラを検証する。

3.ICTによる新しい医療体制の確保

診療所において医師不在の際、本土側にいる医師とオンラインで診察や薬剤師による服薬指導を含む遠隔医療を可能とする、新しい医療提供体制の構築を実証する。

目指す姿・期待する効果

島での生活の選択肢を増やし、生活の満足度を向上させる

  • GSMの島内移動システム、ドローンによる物資輸送、ICTを使った遠隔医療という新しい技術を粟島に導入することにより、島民が「島にはこれしか無い」と諦めていた状況から、生活の選択肢を増やし、可能性を広げることでより豊かな暮らしへと進化を図る。
  • 離島は日本の将来の縮図といわれている。島は、島民のニーズにそって、新技術を導入しやすい環境にあるため、離島が移動や輸送、遠隔医療においてより良いサービスを享受できれば、中山間などでの実装のモデルとなる。
GSMによる島内交通システム
ドローンによる物資輸送
ICTを使った遠隔医療

主な実証内容

1.グリーン・スロー・モビリティ(GSM)を活用した島内移動の確立

実証内容

  1. ①GSMの実証運行実施
  2. ②予約・動態管理システムを導入
  3. ③運行エネルギーの脱炭素化と環境価値調査

活用する技術の特徴

  • 低床、低速、低炭素型モビリティでの島内移動システム。
  • PCからでもアクセス可能なクラウド型予約管理システムを用いて管理者とドライバーが情報を共有。Web上での動態可視化。運転記録出力。
  • GSMに通信機能付き車載器を取り付け、GSMのバッテリー残量並びに充電量をリモートで把握。

主な検証項目

  1. ①GSMの運行 主な検証項目
    公共交通がない島内において、島民の為の公共交通として活用しやすいルートやダイヤを設定し、GSMでの外出機会創出の有用性や実装に向けた座組や課金方法の検証。
  2. ②予約・動態管理システムの導入
    高齢者の多い島内における予約方法の受容性の検証。予約・運行から収集可能な島民の動態把握を行い、公共交通がない島内に適したシステム運用の検証。
  3. ③GSM運行エネルギーの脱炭素化
    GSM本体からの充電量情報把握、環境価値取引による島内交通の脱炭素化の実用性の検証。

主な実証結果

  • ドライバー及び利用者アンケートでは、運転しやすい、乗り降りしやすいなどの評価が多く、高齢者の多い離島では親和性が高い
  • ガソリンが本土より高い離島では、 GSMはコスト削減にも寄与
  • 充電に8時間要することから、運用に工夫が必要
  • WEB予約システムは浸透せず利用は低調。(予約なしの利用がほとんど)
  • 採算は1000円/日・人負担が必要になる計算。経費削減や運用体制の効率化などが必要

調査で見えた課題

  • 利用者数の確保に向けた検討
    ・サービスの改善(ルート・ダイヤ、車両改良、観光利用者の取込)
    ・気候天候の影響の検証
    ・移動需要の創出
  • 料金徴収の方法(自家用有償運送事業を前提とした準備)
  • 支出の改善(コスト検証、運用体制のスリム化)

2.新しい通信インフラによる輸送サービスの確立

主な実証結果

  • ドローンによる医療機器等の輸送→現地の看護師とともにオンライン診療(服薬指導を含む)を一連で実施。
  • 現在の通信環境(4G、LTE)でも、対面と遜色ないことを確認。(患者の顔色、雰囲気等も十分診断可能であり、音声、心電図波形等の伝達も問題なし)
  • アンケート調査では、遠隔で毎日診療が可能になることで85%の島民が「安心である」と回答。また、オンライン診療を「受けてみたい」と57%が回答し、島民の期待も伺える ○慢性疾患の診察はもちろんのこと、救急対応にも一部有効性を評価。

調査で見えた課題

  • 患者宅への訪問型オンライン診療の場合の人員確保
  • 観光客(初診)にも対応できる医療体制づくり
心電図波形を見ながらオンライン診療
遠隔での服薬指導の様子

3.ICTによる新しい医療体制の確保

実証内容

  1. ①医療物資の輸送のため、ドローンにおける目視外無人航行に向けた飛行実験
  2. ②粟島診療所を活用したIoT医療機器を使ったエビデンスに基づくオンライン診療及びオンライン服薬指導

活用する技術の特徴

  • 通信機器の設置によりドローンからの映像やテレメトリデータの長距離・広範囲で送受信可能にし、ドローンのリアルタイム監視の実現。
  • 観測機器の設置によりドローンの目視外飛行に必要な周辺の気象状況の常時監視、機体周囲の状況確認。
  • モバイル通信プラットフォームによる、リアルタイムなエビデンスに基づくオンライン診療及び服薬指導。
図:遠隔医療とドローン輸送
写真:粟島にドローン着陸(テスト飛行)

主な検証項目

  • ドローンにおける(目視外)無人航行に向けた飛行実験にむけての医療物資の輸送を考えてのリスクの洗い出しや規制に対応して実施するための検証(シナリオ1)
  • IoT医療機器を使ったエビデンスに基づくオンライン診療及び服薬に実施を行うための遠隔医療システムやIoT医療機器の適切配置のためのリスクの洗い出しや規制に対応して実施するための検証(シナリオ2)
    例:IoT医療機器、血液、薬などが輸送できるか など

主な実証結果

  • ドローン輸送に加え、物資の陸送、受渡しを含めた物流体制を確認
  • 複数の通信手段を利用することで、特に、災害時等LTE通信が遮断された際の独自の通信環境の整備の有用性を確認
  • 事業性の検証では、イニシャルコスト、運用コスト等を踏まえると現状では、1飛行あたり5000円程度の費用が必要

調査で見えた課題

  • 物流サービスとして、定期航路の構築や収益化に向けた更なる検討
  • 定期航路の実現のためには、通信環境の安定性は必須であり、必要なバックアップ体制も検討が必要
  • 本土、離島両側のドローンポートへの円滑なアクセスを含む物流体制(運用体制)の構築