DEMO実証調査事例

自律航行船による貨客混載サービス実現に向けた実証プロジェクト

広島県:大崎上島町:大崎上島:生野島

概要

島の課題

 移住者を惹きつける「便利で暮らしやすい生活環境づくり」

  • 過疎化対策として、町内どこでも便利に暮らせる環境づくりが重要だが、二次離島では、島外にしかない生活施設へ行く際に移動コストがかかり、買物等が不便な状況にある。一方で、商品等の宅配サービスは、輸送コストが高くなるため二次離島までサービスが届いていない。
  • 昨年度の実証調査において、自律航行船によるオンデマンド水上タクシー事業化に向けた検証を行ったが、事業性確保が課題であった。これを受け、今後の社会実装を念頭に、広域エリアへの事業展開も想定した新たな体制構築を行う必要がある。

位置図

調査体制

取組概要

  • 商品宅配事業に低コストで運用可能な「自律航行型」のEV船を用いた「貨客混載サービス」を組み入れるスキームを検討し、大崎上島~生野島において実証運航を行う。
  • 加えて、今後の完全無人運航を想定した技術環境の向上を図るために遠隔監視システムの試験運用を行う。
  • 航路事業者や周辺自治体など離島関係者へヒアリング調査を行い、実装に向けた体制構築を行う。

目指す姿・期待する効果

海に道をつくり「繋がる離島」の実現

自律航行技術活用で、あたかも海の「道」のような24時間利用可能な海上交通が整備でき、様々なヒト・モノが大崎上島と他地域を自由に往来しながら生活を送ることで、人口減少に歯止めをかけるだけでなく、多くの移住者を惹きつける新しい離島の姿を目指す。

生活の利便性の高い、魅力的な離島の実現

大崎上島は多様な人材を育てる教育の島として、毎年一定数の若年層が「移住」する機会に恵まれている。卒業後の定住、もしくは将来的なIターン移住者の確保を進めることで人口減少から脱却し、環境豊かな魅力的な離島を実現する。

主な実証内容

実証内容・検証項目

  • l昨年度確認できた自律航行技術の安全性の高さをふまえ、二次離島の生活環境向上に寄与する「生協ひろしまの商品宅配」実現を目指し、自律航行型貨客混載サービスの実証運航を行うとともに、フェリー利用者へのアンケートや関係主体の意向把握調査等を行い、主に次を検証した。
    ①自律航行型貨客混載サービス具体化に向けた課題抽出
    ②島民や来島者による自律航行技術に対する意識及び利用ニーズ等の把握
    ③自律航行型貨客混載サービスの事業可能性

主な実証結果

  • 自律航行型貨客混載サービスの実証運航を、遠隔監視システムも活用して安全に実施したとともに、特に荷物搬送に係る具体的な問題点を現地にて確認した(項目①)
  • アンケート結果より、早朝・深夜に必要な荷物を届けて欲しい場合の特別料金として、500円以上が回答者の33%を占めており、24時間稼働の実現で、旅客輸送も含め、高付加価値のサービスとなる可能性を確認した(項目②)
  • 航路事業者、生協ひろしま、住民等より社会実装の意向を確認できたことを受け、大崎上島町で実現後の体制・役割等を検討した(項目③)

成果と課題

  • 成果
    ・自律航行型貨客混載サービス実証結果及び関係主体の意向等より実現可能性を確認
    ・関係主体において船員不足対策としての自律航行技術の必要性を共有、また船員削減が可能な状況ではコスト面でのメリットが期待できることを試算結果より確認
    ・自走化に向けては、貨客混載の利を活かした広域エリアでの展開が必要なことを確認
  • 課題
    (1)早期の社会実装に向けた具体化検討が急務
     ⇒航路事業者との連携を含め、貨客混載サービス実装に係る問題への対応・運用体制構築
    (2)完全無人航行が実現できる環境づくり
     ⇒安全性・安定性の高さに関する社会認知向上を図り、必要な船舶関連法見直しを促す
    (3)利益確保を念頭に置く事業化
     ⇒ より広い分野での企業連携、かつ広域エリアでの事業展開の検討・実装化