DEMO実証調査事例

八丈島木質バイオマス等を活用した小規模分散型エネルギーの創出・観光振興プロジェクト

東京都:八丈町:八丈島

概要

島の課題

八丈島では、自然的、社会的に厳しい条件下の中で、また、コロナ禍の中で、以下の課題を有している。

  1. 石油系エネルギーへの依存(島外からの輸入による島経済への負担)
  2. 木質系バイオマスの廃棄・管理不足(植物性廃棄物、島特有の樹種の管理不足)
  3. 防災まちづくり整備の必要性(台風や豪雨災害などの異常気象)
  4. 島観光への急務な対策(新型コロナウイルスによる島観光業への影響)

位置図

調査体制

取組概要

  • 「平時・有事双方に対応した 小規模分散の自立型エネルギー社会の実現」、「withコロナにおける島観光スタイルの確立」を目指して、小規模分散の自立型エネルギーユニット(木質バイオマスボイラー+スターリングエンジン+蓄電池)の実証調査を行う。
  • 島内樹種や含水率の差異による燃焼効率や発電量を把握するとともに、足湯、蓄電池利用など、島民向けの自然エネルギー体験を行う。

目指す姿・期待する効果

木質バイオマス電熱併給による島内各地での自立分散型エネルギーの供給

有事における移動可能な自立型エネルギー利用による防災機能の強化

木質バイオマスを有効活用し、熱・電気エネルギーに変換するユニットを、島各地の観光交流施設(温浴施設、ダイバーショップ等に供給することで、石油依存から自然エネルギーへの転換を図り、CO2削減及び地域経済の内在化(燃料コストの低減等)が期待できる。
また、有事には、設置場所を災害対応拠点として、避難などの場所として利用するとともに、自立型エネルギーユニットをトラックなどで移動させ、発災現場などで即座に自立型エネルギーとして利用することも可能となる。

新生活様式を踏まえた、島の景観を体感できる着地型観光、観光スタイルによる観光客/リピーターの増加

三密が最も発生しやすい食事時において、島の美しい景観を体感できるディナーポイントを設定し、自動運転車両やドローンによる食事やアウトドア機器の宅配を行うことで、場所の分散を行う。
島の景観をこれまで以上に体感でき、島民との交流とセットで行うことで、新たな着地型観光として確立する。

主な実証内容

実証内容

  • 2020年11月23日~12月20日の日程にて「薪ボイラー燃焼実証調査及び足湯体験」を実施し、島内外の樹種別で木質バイオマスボイラーによる燃焼効率、スターリングエンジンによる発電量を把握。
  • 足湯、蓄電池利用など、島民向けの自然エネルギー体験を行い、島内での自然エネルギー理解・普及促進を図る。
使用する燃料
(島内外の伐採木・間伐材等)
実証設置状況(全体写真)

活用する技術の特徴

木質バイオマスボイラー
(アーク日本製「ガシファイアー」)

多様な木質バイオマス材、高含水材の燃焼を踏まえ採用

出力:60kW~75kW
燃料消費量:18kg/h~23kg/h

スターリングエンジン(Qnergy製「PCK80」)

バイオマス排熱利用型、静粛な稼働、小型を踏まえ採用

出力:1~3kW(ガシファイアーと接続させた場合)

可搬式蓄電池(エネルギーの島製「エネアイループ」)

島内企業が開発した着脱式リチウム蓄電池。防災時にあらゆる場所へ移動可能であることを踏まえ採用

蓄電容量:0.777kWh

実証試験状況(薪ボイラー、スターリングエンジン、蓄電池)

主な検証項目

  • 上記とあわせて、島内での木質バイオマス材の利用可能量、熱需要施設における木質バイオマスユニットを導入した場合の環境性・経済性の効果を把握するとともに、離島ならではの課題を解決するための材の供給、消費、後処理の仕組みを検討する。
  • 観光客の行動動態から自然エネルギーを体験する機会、場所を具体に検討し、三密に対応した新たな着地型観光モデルを検討する。

主な実証結果

  • 燃焼温度300℃、発電量2kWを確認 し、バイオマスによる熱供給能力は十分あると確認(熱は足湯施設で活用実施)
  • 年間バイオマス利用可能木材を推計(約350トン)。廃棄コスト70円/kgとすると約2500万円/年に相当
  • 島内での熱利用施設(温浴施設やリゾート施設)での導入を想定し、エネルギーコストの削減額、投資コストの回収年数を確認
実証試験状況(薪ボイラー、スターリングエンジン、蓄電池)