地産再エネ資源を利用したレジリエントでカーボンニュートラルな離島モデルの構築プロジェクト
概要
島の課題
- 収蔵施設が小規模かつ漁船への供給が優先となっているため、家庭用燃料には20L/回の購入制限が設けられている。
- 四方を海に囲まれた島しょ地域で急峻な地形も存在するなどの地理的・地形的な条件から、豪雨災害等による被害が度々発生しており、防災拠点施設等への自立・分散型エネルギーが必要とされている。
- 島内で消費するエネルギー量の5.3倍のポテンシャルを有している一方、再エネ自給率は4.7%に留まっている。
位置図
調査体制
取組概要
- 充電済みの可搬型蓄電池を実証家庭に配置する。
実証家庭では、生活に必要な家電、冷暖房機、AV機器等を蓄電池からの給電で使用する。 - 既に商用化されているモニタリングシステムを参考に、家庭に設置された蓄電池の残量等を遠隔でモニタリングするシステムの確認を行い、実施可能であれば上記と併せて簡易実証を行う。
- ソーラーシェアリングの導入可能性を確認するため、ソーラーシェアリング導入の先行地域の現地調査を行う。
目指す姿・期待する効果
上天草市全体の脱炭素化を推進する主体として、地域企業を中心として地域エネルギー会社を設立する。同社の事業の一部として、湯島において再エネ発電や同電力の蓄電池への蓄電、さらには蓄電池を各家庭に設置し、各家庭は蓄電池からの電力で生活する。各家庭に設置された蓄電池はリモートで蓄電量等がモニタリングされ、残量0となる前に充電された蓄電池にリプレースされる。
- 各家庭の電力は再エネ電力由来のものとなりCO2の排出はゼロとなる。
- 系統電力からの買電は必要最小限となり、結果としてレジリエンス機能が強化される。
- 設立する地域エネルギー会社は利益を確保することができれば、地域の電力供給を支えるだけでなく、地域雇用を生み出す効果も期待できる。
主な実証内容
実証内容
- ①可搬型蓄電池による生活実証
充電済みの可搬型蓄電池を実証家庭に配置する。実証家庭では、生活に必要な家電、冷暖房機、AV機器等を蓄電池からの給電で使用する。 - ②モニタリングシステムの確認(簡易実証)
既に商用化されているモニタリングシステムを参考に、家庭に設置された蓄電池の残量等を遠隔でモニタリングするシステムの確認を行い、実施可能であれば①と併せて簡易実証を行う。 - ③ソーラーシェアリングの先行事例調査
湯島では家屋の老朽化等により、屋根置き型の太陽光発電設備の設置が難しい。そこで、島内の耕作放棄地を活用したソーラーシェアリングの導入可能性を確認するため、ソーラーシェアリング導入の先行地域の現地調査を行う。
主な実証結果
①・②:2022年10~11月、2023年2月に2回に分けて実施。
1日1回の交換で各家庭の主要な家電への電力供給が可能であった。
また、2回目には、蓄電池運搬に係る人的負担軽減策としてアシストスーツ、蓄電池運搬手段としてEVトライクを活用するなど事業化した際の具体的な運用を想定した要素を追加した実証を行った。
③:2023年2月末に千葉県の先行事例を視察。
成果と課題
蓄電池を各種家電に接続して生活すること自体には大きな支障はないと考えられる。一方で、蓄電池を運搬することの人的負担は想像以上に大きい。蓄電池の設置場所が屋外になるなど交換しやすい環境が整備されたとしても、道路~各家庭の玄関・勝手口等への段差は随所に見受けられる。また、蓄電池自体相当重量があるため、技術の進展により軽量・小型で大容量の電池が開発されることを期待する。
ソーラーシェアリングの導入については、ハード(技術)面では湯島に設置すること自体に大きな問題はないと考えられる。ソフト面では、建設候補地及び土地に関する権利等の整理が必要となる。発電事業者・農業従事者の法人のあり方や契約の形態等も、各地域の事情によって異なると想定される。また、建設候補地の確定以後では、地権者の同意取得、農業委員会への農地転用の申請、架台下で行う農業・作物の選定といった検討・作業が必要になる。
湯島における事業展開は単独では収支が赤字になる可能性が高いため、今後設立予定の地域エネルギー会社は市内他エリアでPPA事業等の収益の柱を確保してから、本格的に事業化に取り組んでいくことが考えられる。