DEMO実証調査事例

ICT活用による離島医療・物流持続的確保実証調査事業

山口県:柳井市:平郡島

概要

島の課題

<医療・見守りの課題>

対面中心の診療・見守りの継続が限界

  • 診療所常勤医なし(週2回通い診療)
  • 高齢化率約80%、高齢者見守りの限界
  • 島内医療スタッフは2人、薬剤管理の限界

<物流の課題>

島内陸送の限界・離島ドローン医薬品配送の課題

  • 定期船(フェリー)1日2便(本土から約100分)
  • 東西地区は車で30分
  • 島内ドライバーや船舶操縦者は年々減少
  • 洋上ドローン配送における紛失リスク

位置図

調査体制

取組概要

(1)限られた医療資源で継続できる医療提供体制構築

  1. ①見守りサービス「Hachi」を患者・家族が利用
  2. ②「Hachi」バイタルデータをオンライン診療で活用
  3. ③島内の医療や見守りの満足度をインタビュー調査

(2)離島特有の条件下でのドローン物流体制を構築

  1. ①現地調査(通信/地理/生態環境)を実施
  2. ②LTE遠隔操縦ドローンによる島内処方薬配送を実施
  3. ③圏外対応配送物位置追跡/誤配送防止システム

目指す姿・期待する効果

医療見守りと物流2分野から「継続して住める」選択をできる島を目指す

(1)限られた医療資源で継続できる医療提供体制構築

診療・高齢者見守り両方で対面診療とオンライン診療を組み合わせる

  • オンライン診療に日常バイタル(PHR:Personal Health Record)活用で医療の質・患者満足度向上
  • 家族(遠方)を考慮した高齢者見守り体制構築。近隣見守り・行政の負担軽減と家族の安心を両立

(2)離島特有の地理・通信・天候条件下での島内ドローン物流体制の構築

  • 悪天候時、陸送やフェリー配送ができない時でも島内患者が処方薬を受け取れる体制を作る
  • LTEやLPWA通信など有効な回線を利用し処方薬の追跡および本人受け取り確認までができるシステムを構築

主な実証内容

実証内容

(1)限られた医療資源で継続できる医療提供体制構築

日常診療における医療確保

  • オンライン診療のHachi併用による質向上を計測
  • Hachi装着者と非装着者に対しオンライン診療を実施。患者や医療者にインタビューを行いオンライン診療のHachi併用による質向上を評価
  • 医師の負担軽減(島への移動時間、他業務で対応できた患者数等)を算出

見守りサービス「Hachi」との連携による医療確保

  • Hachiを使っている患者と家族に対し、島内医療福祉への安心感の変化、島内居住意向変化をアンケート調査

医師不在時の医療確保(オンライン診療+Hachi)

  • 医師不在時の遠隔トリアージの質への影響調査

(2)離島特有の条件下でのドローン物流体制を構築

  • LTEドローンを用いたドローン配送の 安全性・有効性検証
    東地区から西地区へ遠隔操縦による配送(10Km、13〜16分)を行い、島内ドローン配送の安全性・有効性を検証(緊急時離発着場所・連絡体制)
  • 誤配送・紛失回避システム(LEOCS)を検証
    島特有の気象条件(乱気流、強風)、通信条件(LTE通信不安定)地理条件(唯一の道路が寸断されやすい)下でのシステム活用を検証
  • 島内処方薬ドローン配送の事業性検証
    ドローンのイニシャル・ランニングコスト、他輸送手段との比較など

主な実証結果

(1)限られた医療資源で継続できる医療提供体制構築

  1. 「Hachi」利用者数 患者:10人(東5、西5)平均年齢87歳、家族:10人
  2. ②オンライン診療実施件数(7/29〜1/30)実施件数:32件、Hachi患者対象は8件
    医師は移動・宿泊時間を他患者の検査や診察に使えた
  3. ③島内の医療や見守りの満足度をインタビュー調査
    対象者 合計33名(患者10人(Hachi装着者7人、Hachi非装着者3人)、家族9人、他14人)
    本人「装着は概ねできる、医師からの声がけが安心」、遠方家族「島に帰れない時も見守れて良い」
    医師「診察する際に客観的情報が増えた、急変後のモニタリングができる」

(2)離島特有の地理・通信・天候条件下でのドローン物流体制を構築

緊急時の島内での処方薬ドローン配送が可能、流失した時にも機体と処方薬の迅速な位置確認が可能

成果と課題

  • Hachi満足度に課題あり、本人と家族を巻き込んだフォロー体制が必要
  • 日常バイタルデータがどの診療ケースに適しているかの検討が必要
  • ドローン運用体制、費用、通信面での課題あり