DEMO実証調査事例

自律航行オンデマンド水上タクシーを活用した持続可能な離島交通の実証プロジェクト

広島県:大崎上島町:大崎上島

概要

島の課題

  • 大崎上島と本土を結ぶフェリー運航は、始発便6時台・最終便21時台であり、夜間~早朝の島民の移動が不可能。一方、運航時間の見直しは、人材確保や、人件費増大に伴う収益減少の問題など、航路事業者の大きな負担を伴う。
    島民の暮らしをより良いものとするためには、「いつでも・気軽に本土へ行ける移動環境づくり」が課題。

位置図

調査体制

取組概要

  • 小型EV船を用いて、鮴崎港及び福浦港(大崎上島町)~竹原港(竹原市)間での「自律航行オンデマンド水上タクシー」の実証運航。
  • WEBアプリ(AIオンデマンド交通技術)活用による「自律航行水上タクシー予約システム」の実証導入。
  • 利用体験を通じた自律航行に対する意識変化、運航実績からみる安全性、ニーズを踏まえた実現性等を評価・検証する。

目指す姿・期待する効果

海に道をつくり「繋がる離島」を実現する

あたかも海の「道」のような24時間利用可能な海上交通の整備により、様々な人材が大崎上島と他の地域を自由に往来しながら生活を送ることができる移動環境を整える。

豊かで魅力ある地域環境を活かした定住促進

上記の実現により、豊かで魅力的な地域環境を活かして、人口減少・過疎問題に歯止めをかけるだけでなく、多くの移住者を惹きつける新しい離島の姿を目指す。

(例えば)

  • 大崎上島は多様な人材を育てる教育の島として、毎年一定数の若年層が「移住」する機会に恵まれており、卒業後の定住、もしくは将来的なiターン移住者の確保が期待できる。
  • コロナ禍でリモートワークの普及が進む一方、フルリモートの職種は未だ限定的なため、通える範囲での職探しが前提となっている。島外と自由度の高い連絡手段整備により、離島での豊かな生活を楽しみながら希望する仕事を選べる環境を実現する。
新技術活用による安全性に優れ、
環境に優しい水上モビリティ

主な実証内容

実証内容

早朝・深夜時間帯に自律航行オンデマンド水上タクシーを運航する実証調査、及び既存フェリー利用者や島民等への意識・ニーズ調査等を行い、主に次の検証を行った。

  1. ① 早朝・夜間において自律航行システムにより小型EV船が安全に航行できること
  2. ② 体験乗船者によるUX評価
  3. ③ 島民・来島者による自律航行オンデマンド水上タクシーの利用ニーズ
  4. ④ 船員が乗船しない自律航行に対する意識

主な実証結果

  • 試走を含め6日間運航を実施し、全ての便においてトラブルなく安全に運航できた(項目①)
  • 体験乗船者の評価は静粛性・乗り心地等で高く、また平均の支払い可能運賃がフェリーの約6倍になるなど、付加価値の高いサービスとなりうる示唆を得た(項目②)
  • フェリー営業のない時間帯での実装で、余暇レジャー関連や早朝の通院等、今はできない多様なサービスにおいて需要があり、利用が期待できることが確認できた(項目③)
  • 自律航行(無人運航)船の利用に不安を感じる人が少なくないことを確認でき、また乗船体験を通じて不安が軽減される示唆を得た。(項目④)

成果と課題

成果

  • 小型EV船による自律航行で100km以上の安全航行が可能なことを確認
  • 自律航行システム活用により目視が難しい環境下においても安全航行可能なことを確認
  • 早朝・夜間のサービス実装により島民生活の質の向上に寄与することを確認
  • 自律航行船利用に対する不安の存在、及び体験を通じた不安解消の重要性を確認

課題

  • 国民、自治体、航路事業者等への自律航行技術の認知・普及、及び実証を含む運航実績の拡大が必要
  • 離島(小さな需要)での事業を念頭に採算性を高めるための戦略立案、及び具体化が必要
  • 戦略実現のためWIN-WINで繋がる自治体や運航事業者等との連携が必要