DEMO実証調査事例

ICT技術を活用した離島のサービス付き高齢者向け住宅化構想

三重県:鳥羽市:神島、答志島等

概要

島の課題

  • 現在、相互扶助の精神に基づき、地域コミュミティが維持されているが、島民の人口減少や高齢化が著しく進み、島民同士のつながりの希薄化、閉じこもりがちな高齢者も増え、厳しい状況にある。さらには、見守り手が課題となっている。
  • 診療所に配備していない医薬品を処方してもらう際、本土へ渡航し調剤薬局で医薬品を受領することが、島民にとって時間的・費用的に大きな負担となっている。

位置図

調査体制

取組概要

  • コミュニケーションロボットによる声掛け、およびセンサーデータの活用により、バーチャルサービス付き高齢者向け住宅サービスの実現する。
  • 医療用高精細カメラやオンライン服薬の体制を構築し、診療の精度の向上を図り、オンライン服薬指導を行う。
  • 島民の生活支援体制及び医療的不安の軽減を図り、その有効性等を評価・検証する。

目指す姿・期待する効果

ICTを用いた島内サービス付き高齢者向け住宅化を実現する

BOCCOを離島の高齢者宅へ設置。高齢者の暮らしに寄り添い、生活相談や安否確認サービスを提供する。BOCCOを管理人とし、各自宅をサービス付き高齢者向け住宅に見立てる。
日常会話、日頃の忘れがちな行事や予定、服薬などのリマインドの声掛けを実施。生活相談や安否確認も実施することで、安心感を提供し、住み慣れた離島での生活を延伸させる。必要に応じ、地域医療介護リソースへも情報共有する。

オンライン診療やオンライン服薬指導による移動負担の軽減

BOCCOの声掛けを通して、オンライン診療の質の向上、オンライン服薬指導の充実化を図る。
併せて、医薬品の個人宅配送を実施することで、本土と変わらない医療介護体制を構築。医療者からの指示に応じて、 声掛け内容も随時更新。
また、生活圏に診療所がない地域でのオンライン診療も目指す。
ICTを通して必要なタイミングで見守りができ、移動に係る時間や費用も削減可能。

主な実証内容

実証内容

ICTを用いた島内サービス付き高齢者向け住宅化を実現する

離島住民の家を「居室」と見立て、生活に不安を抱える高齢者の自宅に管理人(コミュニケーションロボット「BOCCO emo(以下、BOCCO)」)を設置。高齢者からの発言に対してBOCCOが応答したり、注意喚起や声掛けを実施するとともに、万全を期すために見守りセンサーも設置し、家庭内での動きや環境の見守りも行いました。
日常会話や忘れがちな行事や予定、服薬などのリマインドも行うことで生活の支援を行い、医療介護関係者とも情報共有し円滑な見守り体制を構築。必要に応じ、医師側からも服薬状況や家庭内血圧の確認を行っています。

オンライン診療やオンライン服薬指導による移動負担の軽減

答志島の答志町では、これまで民間の診療所が地域医療を担っていましたが令和2年4月に閉院しました。地域からは公立診療所の設置と常駐医師の配置を望む声があがっていますが大変厳しい状況です。そこで新たな診療所を設置せず、閉院した民間の診療所を利用した「答志町オンライン診察室」を設置し、病状が安定している再診患者さんに対して、オンライン診療とオンライン服薬指導を併せて行いました。車で15分離れた桃取診療所に行かなくても診療を受けられ、薬剤を自宅で受け取れる体制を構築することで患者の移動負担軽減を図りました。
オンライン診療では遠隔聴診器や医療用高精細外部カメラの活用を可能とすることにより質の向上を目指し、オンライン服薬指導では薬剤師が提示する薬剤や薬剤情報を大きなモニターに映し出し、高齢者でも理解しやすい環境整備を行いました。

主な実証結果

  • 「家の中が賑やかになった」「夜が寂しくなくなった」「いつも気にかけてくれるので安心」「話す相手がいて嬉しい」などの意見を聞くことができ、対象者は明らかに他覚的に元気になり、自覚的にも元気になった人がほとんどだった。
  • 「おはよう」や「ただいま」「おやすみ」をいう相手がいるだけで高齢者の孤独感を和らげる。また、ロボットの音声を操るセコムスタッフによる人間味のある返答がより愛着を湧かせ、家族がいるような安心感を与える。
  • 医師や集落支援員、セコムスタッフ、そして遠く離れた家族に見守られている安心感があるため、不安を訴え診療所を訪れる回数が顕著に減少した対象者もいた。
ある日のやり取り

成果と課題

  • オンライン診療では、遠隔聴診器や医療用高精細外部カメラの利用が可能となったため、医師、看護師、患者ともに伝達情情報量が増加。以前までのオンライン診療と比べ格段に診療の質が向上した。
  • オンライン服薬指導では、最初の事例で調整がスムーズに行えず、会計までに1時間近く必要であったが、診療所スタッフや薬剤師が運用に慣れることによって患者によっては20分未満にまで時間を短縮することが可能となった。
  • アンケート結果ではオンライン診療、オンライン服薬指導ともに患者からの評価は高く、移動の負担が軽減するとの意見を多くいただいた。しかし、薬剤配送料が900円ほどかかるため負担が大きく感じるとの意見が大半であった。