自立可能且つエネルギーフリーな物流の実現に向けた実証事業プロジェクト
山形県:酒田市:飛島
概要
島の課題
- 問題):物流が定期船のみであること及び悪天候による長期欠航が起きやすい
課題):定期船に依存しない、新たな物流の代替手段の検討及び確立 - 問題):飛島の高齢化・人口減少により、主産業の漁業が衰退
課題):新技術による漁場(海洋資源)の保護や漁業の継承 - 問題):飛島の高齢化・人口減少により、漂着ゴミの運搬負担の増加
課題):新たな漂着ゴミの運搬方法の確立
位置図
調査体制
取組概要
- ニーズ調査として欠航時の輸送物資のニーズ調査及び海洋資源保護のニーズ調査を実施する。
- 無人航行を可能とした帆船型ドローンを活用した実証調査を実施する。
・本土(酒田)-飛島間の物資輸送
・飛島島内地区間のごみの運搬
・海洋資源の把握と保護
・飛島の安全対策
目指す姿・期待する効果
実現したい離島地域のビジョン
- 自然エネルギーを活用した物流サービスを実現し、令和3年度実証事業を更にパワーアップした、人口減少や天候不順といった環境変化にも柔軟に対応できる持続可能な社会システムを実現する。また、技術を応用し、飛島の新たな産業を確立する。
本事業で目指す姿・期待する成果
- 帆船型ドローンによる飛島-本土間の物資輸送の確立することで、長期欠航による物流制限が解消し、物流に左右されない島民の生活を実現する。
- 島民の高齢化に伴う漂着ゴミの運搬問題や漁業(主要産業)の後継者問題が帆船型ドローンを利用することで補完され、島の諸問題が解決した状況を実現する。
- 海洋資源に関するデータを収集し、利活用することで、海洋資源保護及びより効率的な漁業手法を実現する。
主な実証内容
実証内容
- ニーズ調査(欠航時の輸送物資のニーズ及び海洋資源保護のニーズ)
定期船の欠航が長く続いた時に必要とする物資について、島民、観光客等からニーズ調査を実施した。
島民(漁業従事者)から島での海洋資源の保護や生育を期待する産物等をヒアリングし、自動航行する帆船で得られるサービス(海洋資源の育成状況の監視等)のニーズを把握した。 - 帆船型ドローンによる検証
本土ー飛島間の物資輸送:本土(酒田市)から飛島までの間(約40㎞)で航行可能かを検証した。航続・耐久性の検証。全体オペレーション。事業化の課題を明確化した。
島内地区間のごみ等の運搬:帆船型ドローンで漂着ゴミの運搬を実施した。従来の運搬と比較した負担軽減やエネルギー消費の軽減を検証した。
飛島の安全対策:帆船型ドローンに海上カメラを搭載し、御積島(孤島)をカメラで撮影し、遠隔でも監視が可能か検証した。
海洋資源の把握と保護:帆船型ドローンに海中カメラを搭載し、島内周辺海域の決められた場所を自動で回遊させ、調査を自動化できるか検証した。また、AIによる画像解析技術を利用して、海洋資源の判別が可能か検証した。
主な実証結果
- ニーズ調査(欠航時の輸送物資のニーズ及び海洋資源保護のニーズ)
欠航時の輸送物資のニーズは、生鮮品や燃料などの生活必需品。海洋資源保護のニーズは、近海の海洋資源の安定的な漁業の需要、種苗放流の実態把握の需要を確認した。 - 帆船型ドローンによる検証
本土ー飛島間の物資輸送:約17kmの自動航行に成功した。また消費電力を抑えた運航に成功し、酒田飛島間でも十分に長時間航行が可能であった。
島内地区間のごみ等の運搬:帆船型ドローンでごみ袋2袋を運搬できることを確認した。
飛島の安全対策:インターネット経由で海上カメラで撮影及び監視できることを確認した。
海洋資源の把握と保護:事前設定したコースの自動航行できることを確認した。またAI画像解析によって対象物質の判別可能であった。
成果と課題
成果
幅広い関係者からのヒアリング・調査からサービス確立に向けた情報を見いだせた。帆船型ドローンによる検証では、実証を通して今後の事業化に向けた課題を抽出でき、課題はあるものの帆船型ドローンの利点及びその他の新技術を活かして諸課題が解決できる可能性を見出した。
課題
帆船型ドローンのハード面(波や風に強いセールでの検証など)を再検討・実装する。今後の自動運航船に伴う基準・制度を踏まえながら、出発から到着まで全体オペレーションの検証や事業体制・役割分担等を検討していく。