限定的な交通・物流手段の解決に向けたサプライチェーンの最適化プロジェクト
概要
島の課題
- 人口約200人の飛島には、年間約1万人の観光客が訪れるが、島内には、公共交通機関やタクシーが無いため、観光客が気軽に食事処へ移動したり、お土産を買ったりという観光需要を逃している。
- 公共交通やタクシーが無いため、観光客や島民へ買い物支援が課題である。
- 島内交通網の脆弱さや常駐する行政職員の少なさから、島内移動困難者の買い物支援や災害時の対応も喫緊の課題である。
⇒ 次世代の持続可能な島内交通・物流手段の確立が必要
位置図
調査体制
取組概要
- スマート・オーダーシステムと交通・物流手段(EVや多機能ロボット)を組合わせ、住民や観光客に向けて、日用品や食事等の注文対応から配送までを試行的に実施・検証を行う。
- 島内全域での通信を可能としたLPWA※ネットワークを介したコミュニケーション基盤を活用した災害時の被災状況・避難状況の把握を目的とした実証実験を行う。
(※1)Low Power Wide Area」の略語で、少ない電力で長距離かつ広範囲の通信を可能とする技術
目指す姿・期待する効果
島内物流の円滑化に向けたシステム(スマート・オーダーシステム)の構築
人口減少と高齢化が進む離島において、限定的な交通・物流手段や、地域の生産者・商店・観光施設のサービス提供体制の充実を図るために、デジタル技術、eモビリティ、多機能ロボットの組み合わせによって発注・注文から配送までをシステム化し、最適な自律型サプライチェーンの構築(※1)を目指す。
(※1) :複数のサービスを組み合わせ、同様の地域課題を有する島嶼部への展開可能なモデルの構築
災害時における平時物流システムの活用方法の検討
災害復旧要員を確保しにくい離島において、平時に利用するインフラやデジタルサービスを有事にも活用することで、被災状況、避難状況の共有による効果的な自助・公助の仕組みの構築を目指す。
主な実証内容
実証内容
●スマートオーダーシステムを活用したサービス提供
・島民や観光客がタブレットやスマホでオンライン注文を行い、日用品やお弁当等の販売から配達に関する検証を行う。配達は、e-モビリティを利用し、運営上の課題を確認。
・利用促進及び更なるサービス向上を目指し、スマートオーダーシステムのニーズ調査(20名を対象)も合わせて実施。
検証項目
●島内の避難訓練に合わせ、LPWA通信を利用した、島民の避難状況の一括確認がWEB上で実施可能か検証を行う。
実証結果
- スマートオーダーシステムを活用したサービス提供(期間:10月中旬~11月中旬)
<利用実績>
アプリ登録者:60名、利用者:21名(島民10名、観光客11名)、
売上額:35,450円、総注文数:52、配達時間:10分~15分 - 実証実験を元にした試算から、コストは約15万円/月(人件費12万含)で 、繁忙期(5月~9月)は月平均15万円の黒字、閑散期(10月~3月)は6万円の赤字で、1年間で約30万円の利益と算出。また、コストとなる人件費は配送者の雇用創出として考えることができる。
- 利用者への調査結果では、
・LINEを活用したシステムは使い勝手がいい、わかりやすいとの意見多数
・一部の島民からは、電話利用も可能として欲しいとの意見もあり
・メニューに対して、島民は生鮮食料品(卵や豆腐など)、観光客はお弁当のニーズが高い
・配達料金が高いという意見が約4割、配達時間は「ちょうどいい」が8割であった。 - 島民向けの「避難訓練」時にLPWA環境を利用して、避難路を通過した時刻の確認がweb上で確認でき、島民の避難状況の把握することが確認できた。
成果と課題
●スマートオーダーシステムの実証実験を元にした試算から、コストは約15万円/月(人件費12万含)で、繁忙期(5月~9月)は月平均15万円の黒字、閑散期(10月~3月)は6万円の赤字で、1年間で約30万円の利益と算出。また、コストとなる人件費は配送者の雇用創出として考えることができる。今後、事業継続するためには利用者増、客単価増が必須となるため、メニュー需要分析や配送料のサブスク等、仕組みの検討が必要。
●LINEアプリを利用したオーダーは観光客や若者には直ぐに受け入れられ概ね好評を得た。一方で島内は高齢者が多く、デジタルデバイスを持っていない島民の利用も考慮した別の手段(電話等)の検討が必要。
●避難訓練の実証にて島民の避難状況をwebで一括確認することができたが、避難していない島民の状況を把握することはできないため、災害時に安否確認できる仕組み(高齢者見守り等)の検討も必要。