移動式広域通信網による省力化技術と高速通信網を活用した産業振興に関する実証調査
長崎県:五島市:五島列島(福江島、赤島、黄島、黒島)
概要
島の課題
- 五島市は11の有人離島から構成されているが、通信環境が整備されていない島、エリアがある。
- 鳥獣対策の実施により被害は減少しつつあるが、ボランティアの捕獲隊の高齢化が進み、今後効率的な鳥獣対策が求められる。
- 山間部では通信環境が整っていないエリアが残されており、罠の遠隔監視などの効率化が難しい状況。
- 荒天時の欠航など天候に左右されやすい航路・航空路によって、ブランド牛として知名度の高い五島の牛のせり市など、“対面”を基本とする商取引の機会が失われる可能性がある。
⇒ 市内全域の通信手段の確保や、移動リスクを回避するリモートでの取引環境の仕組みが必要
位置図
調査体制
取組概要
- LPWA基地局を本島⇔二次離島間の定期船等に設置し、移動可能な通信基地局として運行。
- 上記通信網とセンシング技術を活用し、見守りサービス、有害鳥獣対策を実施。通信状況やサービスの有効性について検証。
- 二次離島の住民見守りでは、定期船を使った移動基地局を、害獣対策では既設基地局と仮設基地局を用いて、住戸/罠に設置した加速度センサーが、通信圏外エリア(主に二次離島等)でどの程度取得できるかの調査、検証(約90日間)
- 島で開催される五島牛のせり市をオンラインで可視化し、天候に左右されず島外の購買者がせり市に参加できるシステムを検証。
目指す姿・期待する効果
定期船を活用した移動基地局と仮設基地局の運用による広範囲での通信網活用
大規模工事が不要で広域通信手段として期待される移動可能なLPWA通信によって、通信インフ
ラが整備されていない地域において、見守りサービスや有害鳥獣対策への活用を試行し、将来的に
は住民生活に密接にかかわる情報の送受信を行うなど、すべての市民にスマート技術を活用した行
政サービスの提供を目指す。本島に比べ離島、二次離島地域は基地局が整備されておらず格差があるケースが多く通信エリアの課題が発生するが、移動基地局を使いインフラコストの低減を図ったり、仮設基地局を使って不感エリアをなくすことができれば活用分野の幅が広がると推察。
オンラインせり市の導入による産業振興
島で開催される五島牛のせり市において、離島までの移動コストや悪天候による欠航リスクを回避し新たな取引機会創出のため、リモートで参加可能なオンラインせり市の実現可能性と魚市場等の島の各産業への横展開について検証する。
主な実証内容
1.定期船を活用した移動基地局と仮設基地局の運用による広範囲での通信網活用
実証内容
- 定期船に移動基地局を設置し、加速度センサーによる二次離島の住民見守りの実現可能性を検証。
- 通信圏外地域に仮設基地局を設置し、LPWA通信とLINEを組み合わせた罠の遠隔監視システムを運用。使い勝手/正確性等実用性があるかの検証を実施。
- 携帯通信圏外を含む30か所でセンサー付きの罠を設置・運用。実証期間中は従来のような定期的な見回りを行わず、LINEアプリを活用した効率的な見回りを実施。
実証結果
- 移動基地局によって、80%強の家庭で扉等に設置したセンサーからの加速度検知のデータを1日複数回取得。生活リズムと連動したデータとなっており、1日数回のデータ取得によって簡易的な見守りに活用可能と推察できる。水道メータ―などと組み合わせれば、より詳細な見守りも可能と判断できる。
- 仮設基地局と遠隔監視システムによって、罠の見回りに要する移動時間の削減(1人平均約300時間/年)と同時にイノシシの捕獲に成功。
- アプリにより捕獲情報が共有されることで、効果的な住民等への注意喚起も可能。
成果と課題
- 移動基地局が通信インフラとして有効であり、住民見守りとして活用できることが確認できた。
- 通信圏外地域でも仮設基地局によってLPWA通信による害獣罠の遠隔監視の有効性が見込める。
- LPWA通信を活用したサービスに関する住民のリテラシー醸成と利用促進及び市内全域へのLPWA エリア拡大方法の検討(手段/費用負担の整理)が課題。
2.オンラインせり市の導入による産業振興
実証内容
- せり市のオンライン配信
・リアルタイム配信を行い、画質と即時性を検証。
・映像配信による購買者への情報提供について有効性を検証。
実証結果
- 光回線通信でFHD画質の映像を、時差0.3secでオンライン配信。
- 実証時に購買者へインタビューを実施。約7割から牛の品質評価を配信映像だけで判断可能と評価され、映像配信による情報提供が有用であることが示唆された。
成果と課題
- 配信映像のみで牛の品質評価が可能と約7割の購買者が評価しており、実運用可能であることが判明。
- せり名簿のデジタル化や撮影期間・撮影方法、札入れの仕組み等に関してJAごとうや生産者と協議しながら運用を含めた仕様の検討が必要。