モビリティ×ICTで目指すスマートアイランド似島プロジェクト
広島県:広島市:似島
概要
島の課題
- 人口減少(30%減/10年間)※及び高齢化(高齢化率52.3%)※が加速 ※2020年現在
- 公共交通がないことから島民の生活利便性や来島者の回遊性が低い。
- 広島市中心部から近く来島者も多いが、公共交通が無いことが観光客の伸び悩みの一因ともなっている。
- 狭隘道路が多く、自動車移動が制限され、また、高低差が大きいため、高齢者の移動負担が懸念。
- 島内道路の大半は狭く自動車が通行できないことから、島内移動は徒歩や自転車が中心。
- 島外電力に依存し、地域レジリエンスが低く、緊急・災害時のエネルギー確保に懸念。
⇒ 次世代の持続可能な島内交通の確立や地産エネルギーの確保が必要
位置図
調査体制
取組概要
- グリーンスローモビリティ(グリスロ)の走行実証を行い、利用満足度、支払意思額、電力消費量などを調査
- 簡易な予約システムの開発・検証と、そのシステムを活用した情報伝達訓練を実施
- グリスロの動力源と島の災害時電源にも資する地産エネルギーの可能性を検証
目指す姿・期待する効果
新たなモビリティやICT技術を活用し島内交通を構築し、島民及び来島者の回遊性を向上
離島環境に親和性の高いグリスロとワンプッシュで予約できる新たな通信システムを組合わせることで、島民生活の利便性向上と来島者の回遊性の向上を同時達成する新たな島内交通の在り方を具体化を目指す。
利用可能な地産エネルギーの確保、カーボンニュートラルの推進
島内の自然資源を活用した発電量と島内の電力消費量、島内のグリスロ走行に必要な電力消費量を検証し、再エネによるグリスロ電源の確保や蓄電池を活用した災害時の電力供給、エネルギーの地産地消を目指す。
主な実証内容
実証事項
グリスロを活用した走行実証
- 12月に定時定路線、1月に定時定路線及びデマンドによる走行実証を実施。
- 走行実証前にアンケートによる島民意識調査を行い、島民の生活様式に合わせた経路や時間帯等を検討。走行実証後も、同方法で利用有無や課題、導入意向等について調査を実施。島外者には乗車時にアンケートを実施。
乗客とモビリティを“ワンプッシュ”でつなぐ新たな通信システムの導入
- デマンド運行のweb予約システムをベースに、高齢者や観光客等向けのワンプッシュ簡単予約システムを開発し、島内公共施設や島民へ配布・運用。
- デマンド予約だけでなく、当該システムを活用し、情報伝達訓練を実施。
似島のエネルギーポテンシャル調査及び有効な創エネ・蓄エネシステムの検討
- 島内で発電が見込まれる再エネ電力量の試算及びヒアリングによる島内の電力消費量を把握し、電力需給のバランスを調査。
実証結果
- 2か月間のグリスロ走行実証の結果、延べ414名〔島内266名、島外148名〕の利用実績に加え、島民の約7割が今後導入すべきとの地元ニーズを確認。
- 定時定路線型・デマンド型が選択可能な1月の時間帯(7時~11時)の利用状況を比較すると、定時定路線型2.7人/4h、デマンド型が3.8人/4hであり、デマンド型運行の優位性を確認。
- 冬期にも関わらず一定の観光利用があったことに加え、利用者の高い満足度や有料化の可能性を確認。
- グリスロ走行実証の結果、島内・島外の一定程度の需要と、地元の導入意向や島外利用者の満足度・有料時の利用意向を確認でき、地域交通や観光コンテンツとしての有効性・可能性を確認。
- 情報伝達訓練では、家屋内での情報伝達の有効性を確認。情報内容としては、島内に特化した情報が必要で、特に、「災害場所の情報」が必要であるという意見を多く確認。
- 島内の年間消費電力は太陽光発電見込量の約2.7倍と見込まれ、島全体の電力需要を賄うことは難しいことを確認。
成果と課題
- 似島におけるグリスロの“地域交通としての有効性”及び“観光コンテンツとしての可能性”を確認。
- デマンド型運行の利用促進の仕組みとしてワンプッシュ簡単予約システムの有効性を確認。
- 避難所となる公共施設ならば、電力需要を賄えることを確認。
- グリスロの必要性は認知しているものの今回の運行内容や広報・周知不足が原因で利用等に踏み切れなかった傾向も確認され、さらなる利用促進策や運行体制の検討が必要。
- 利用者からの表示内容のわかりにくさ等の指摘もあり、意見を踏まえたシステム改良が必要。
- 走行実証後半では、利用者増加によるドライバーへの負担が懸念されたことから、より利用者が増えることが予想される時期(夏休み等)のオペレーションの検証が必要。
- 再エネ供給や蓄電池の活用など、災害時のレジリエンス強化に向けた島内における再エネ電源の確保についての検討が必要。