自ら学ぶ機会を増やす、男木島スマート交流プロジェクト
香川県:高松市:男木島
概要
島の課題
- 島唯一の学校である男木小中学校は、小規模校であるため身近な先輩等、将来のロールモデルになるような人々や同世代の子供たちとの交流が限られる
- 小規模学校であることや指導者の不足、船による移動が伴うことで塾、習い事など学習環境や島外との交流が制限される
- 子供の進学にあわせて島を離れる実態があり、子育て世帯の定着が難しい
- 地域の担い手不足により、高齢者見守り等の負担が特定の人へ重なる
⇒ 学習環境や交流環境の向上、地域の見守り機能を向上させる取組が必要
位置図
調査体制
取組概要
- 本土側で大学生による支援組織を立ち上げ、島の生徒に対して一般的な学習支援や進路選択に役立つ情報提供などを実施。
- 生徒の満足度や事業性の比較評価・分析を行い、今後の事業展開の検討を行う。
- センシング技術を活用した見守りシステムの構築、動作状況を確認する。
目指す姿・期待する効果
島の児童・生徒の学習環境の多様性を高め、指導者不足を補う
ICT機器を活用し、島の児童・生徒が本土側の学生から学習支援を受けたり、学生自らの体験を
語ってもらい進路選択に役立てるなどの知的交流の場を構築し、島の児童・生徒が多様な考え方
や意見に接する場を構築することで、自ら学ぶ機会を増やす
高齢者見守りシステムの導入へ
地域の高齢者見守り機能の低下に対応するため、男木島島内をネットワーク化(※LoRaネットワークを導入)を図り、センサーによる見守り機能導入を目指す。
※LoRaとは、長距離低消費電力無線通信の一つ
主な実証内容
1.島の児童・生徒の学習環境の多様性を高め、指導者不足を補う
実証事項
- 香川大学の学生を中心とした支援組織を立ち上げ、子供たちとオンラインを中心としたワークショップ形式の交流を実施
計30回の交流を通じた子供たちの変化を自己評価項目で検証 - ①自己肯定力 ②言語化能力、表現力 ③コミュニケーション力 ④協力心 ⑤交流や他者との関り ⑥対応力 などの評価項目を設定し、検証
- 高松小学校と目的を設定しない交流を毎朝30分程度実施
実証結果
- 大学生と交流を重ねていくにつれ、一方通行の交流から双方向の交流が実現
・10回程度から大学生と子供たちとの関係性・信頼性が構築
・20回程度から交流の質が向上、大学生からのサポートがスムーズになったり子供たちの積極性が向上 - 東京からの専門家によるオンライン配信と、大学生による現地での里山学習を組み合わせることで、遠隔での体験型学習が実現
- 大学生の他にも島外の講師や他校の児童、水族館とを結んだ交流を述べ30回以上実施
- 小学生同志の交流では、教師が意図しないような子供らしい自然な交流が実現
- オンサイト・オンラインの交流において、子どもたちは大学生のサポートを受けながらIcTツールを活用してフィールドワークを実施。対面と遜色ない交流レベルまでに達した
成果と課題
- 交流を重ねたことで①から⑥の評価項目全てにおいて実施後に評価が高まった
- 大学生の子どもたちへの指導方法やICT機器などの専門的な知識の習得が課題
- 受益者が個人ではなく地域に還元される為の仕組みや周知方法の検討
- 大学生と継続して運営・運用するための組織づくりや予算の捻出方法の検討
2.高齢者見守りシステムの導入へ
実証事項
- LPWAネットワークを導⼊し、ドアに設置いたIoTセンサーで高齢者の活動量を計測
- 同時にボランティアや診療所スタッフの協力のもと目視による高齢者の行動も調査、結果を手動によるアプリケーションへの入力を行い、自動と手動の違いについても検証、両者の情報を関係者間で共有
実証結果
- ドアセンサーの異常値から高齢者の異変を検知
- センサーの作動数と目視回数の合計ポイントから、高齢者の活動量が可視化され医療・福祉関係者とデータに基づく情報共有が可能
- 島内をカバーできるネットワークの範囲を確認、IoTセンサーも問題なく動作した
- 地域に見守られているという心理的な安心を感じた高齢者の意識が変化
- 高齢者の活動量が可視化され医療・福祉関係者等とデータに基づいた情報共有が可能になった
成果と課題
- 他人との関わりを感じた高齢者の意識の変化が見られた(心理的なケアが向上と推測)
- 実証実験対象外の世帯からもセンサー設置の要望が多数寄せられた
- 島の子どもと高齢者との交流も活発になり、事業への理解や一体感を得られた
- 受益者が個人ではなく地域に還元される為の仕組みや周知方法の検討
- 大学生と継続して運営・運用するための組織づくりや予算の捻出方法の検討